単語集のやり方(2) ~なぜ「潰す」のか~

なぜ単語集を「潰す」ことが必要なのかを説明します。

それは「仮の目標を設定する」ためです。

単語集をやる人は多いが、収録単語を覚え切る人は少ないものです。河野塾の門を叩く生徒さんでも、これまでに一冊の単語集をやり切った経験がある人とそうでない人では、後者の比率が圧倒的に高いです。そしてこれまでどのようなやり方でやってきたかを尋ねると、「う~ん、何度も眺めて…って感じですかね」などとおっしゃる方が多いのです。

これは適切な目標設定が成されていない状態です。すなわち「どういう状態になったらその作業が終わるのか」が明確でないのです。

単語集を覚えるという行為は、それ自体それほど楽しいものではありません。「苦行」と感じる人も多いでしょう。

終わりのない苦行に耐えられる人間はいません。何とか逃れようとします。単語集の場合、それは挫折を意味します。

苦痛な作業であっても「何のためにやるのか」(目的)と「何をすれば終わるのか」(目標)が明確であれば、耐えられます。

単語集をやっている人にとって、前者の「目的」は比較的明確でしょう。単語の意味をあらかじめ知っていることが学習の効率アップ、ひいてはTOEFLなど各種試験の点数向上につながると思うからやるわけですから。

問題は後者の「目標」です。これが、英語でいえばcrystal clear、つまり「水晶のように透き通った」と言えるほど明確でなければいけません。「不明な単語に付けた印が消えるまで」という目標はあいまいさがなく、明確です。これを「仮目標」とすることで、単語学習が挫折するのを防ぐのです。

それにしてもこの目標はなぜ「」なのか。それは単語学習の目標に関する、極めてよくある誤解と関係しています。この誤解については次回投稿でお話します。

単語集のやり方(1) ~「潰す」とは何か~

私は生徒さんに「単語集を『潰す』ように」と指示しています。では「潰す」とは何なのか?

それは「知らない単語に印を付け、覚えたら消す。印が全部消えるまで繰り返す」ことです。

やり方を具体的に説明します。本書では一つの単元に500単語が収録されています。最初のステップは、その500単語すべてについて、意味を知っているかどうかをテストすることです。

まず紙などを用意して、日本語訳を隠し、英単語の意味を思い浮かべます。

“quota”の意味はなんだっけ?

そして紙をずらして日本語訳を確認します。思い浮かべた意味が日本語訳と合致していれば特に何もせず次の単語に進みます。もし違っていれば左隣のチェックボックスに鉛筆で印を入れます。

紙をずらして意味を確認し…
間違っていれば印を入れる

日本語訳の下に、単語を記憶に「引っ掛ける」ための解説があります。この解説が全ての単語に付いているのが本書の特徴ですが、テストの際は解説は読まなくて結構です。

このようにして500単語すべてをテストし終えたら、最初の単語に戻ります。ここからが本番です。最初のテスト時に印を入れた単語のみ、テスト時と同様に日本語訳を隠し、英単語の意味を思い浮かべます。

印が付いた単語のみ行う

そして正しい日本語訳が言えれば印を消します

正解したら印を消す

間違えたら印はそのまま残しておき、解説に目を通します。

間違えたら印は残し、解説を読む

この「単語の意味を考える」→「正解すれば印を消し、間違えれば印を残して解説を読む」という作業を、その単元に含まれる全500単語(の内、印が付いたもののみ)に対して行います。単元の最後にたどり着いたら、日付を入れる欄に終了の日付を記入します。

単元の最後の単語に到達したら、日付を入れる

そしてまた最初の(印の付いた)単語に戻ります。日本語訳を隠し、単語の意味を思い浮かべ、正しければ印を消し…と、1周目と同じ作業を行います。最後の単語までたどり着いたら日付を入れ、また最初に戻ります。

2周目を終えたら日付を入れ、最初に戻って3周目

この作業を、全ての印が消えるまで繰り返します。これが「潰す」です。

ある単元の500単語を潰し終えたら、次の単元に進む前に、付属のCR-ROMに収録されている音声ファイルを用いて、さらに「潰す」作業を行います。音声ファイルのやり方については後の投稿で説明します。

音声ファイルも潰し終えたら、いよいよ次の単元に進みます。例えば「80レベル」の「1st」を終えたら、次は「80レベル」の「2nd」です。「2nd」についても本で潰し、さらに音声で潰し終えたら、「100レベル」の「1st」へ進むといった具合です。

こうして全単元を潰し終えたら、この単語集を1回終えたことになります。

ではなぜ単語集を「潰す」と発想すべきなのか?次回の投稿でお話します。

留学の現状

昨年9月よりアメリカに留学している元受講生さんからご報告がありました。

新型コロナの影響で4月に一時帰国を余儀なくされていましたが、夏に再渡米したとのこと。留学2年目が始まったばかりです。

ところが米国に戻ったとはいえ、授業はオンラインがほとんどのようです。以下、彼の便りから引用します。


まず授業形態についてですが、履修している科目については、セメスター開始当初は対面での授業が一部あったのですが、スタートしてほどなくして教授がコロナにかかってしまい、オンラインに切り替わり現状は全ての授業がオンライン授業という状況です。こういう状況ですので、対面で行っている授業についても参加している生徒はほとんどおらず、実質的にほぼオンライン授業という状況です。

次に授業の質についてですが、これはもうひどいの一言に尽きます。従来のようなディスカッションはほとんどなく、基本的にはレクチャー形式になっています。それならまだましで、週2コマのうち1コマはasynchronous lectureと無駄に格好いい呼び方の単なる自習にしている授業もあります。ちなみに僕が履修している5科目のうち2科目がこの方式を採用しています。2コマのうち1コマが自習で済むなら、むしろ今までそんなに中身の薄い授業をしていたのかという気になりもしますが、正直これで授業料満額(しかも昨年より値上げしてます)を請求するのは、私費留学だと発狂しているなと感じます。

学生間の交流については、はっきり言って消滅したに等しいです。今までグループワーク後にランチに行ったり、グダグダと喋ったりすることがなくなり、時間をきっちり決めてビデオ会議を行い、終わったら解散という風になり、正直英語をしゃべる機会がほとんどないというのが現状です。(英語力、特にスピーキングは留学前レベルに戻った気すらしています笑)下記ご参考ですが、ネイティブの学生でさえこういう状況なので、留学生についてはもはや言うまでもないといったところでしょうか。
https://www.bloomberg.co.jp/news/videos/2020-10-12/QI2M3CDWLU6J01

色々と愚痴に近い近況報告となってしまいましたが、こういう風になって唯一良かったこととしては、自分の時間が従来と比べると圧倒的に増えたので、本当に自分のやりたい勉強に時間を気にせず集中できるのは、卒業後に待ち受けるサラリーマン生活のことを考えると、本当にありがたいことだなと思っている次第です。


いや~、大変つらく、腹立たしい状況ですね。せっかくアメリカに行っても、ディスカッションがなく講義形式、学生同士の交流もないのでは留学の意味は半減以下でしょう。もちろん日々の生活の中では異国ならではの体験や発見もあるでしょうが、その程度では留学費用と労力に見合わない。それなのに学費値上げのうえ、全額取られるとは!「私費留学なら発狂」というのもわかります。

こうした問題は国内でも起こっていますね。施設を使わないのに施設費を全額徴収されるなどの問題もさることながら、交流・ふれあいなくして何の学生生活か、という点が最も大きいと思います。オンラインでは「偶然の出会い」もない。Amazonでおすすめされる書籍を買うだけでは過去の自分の興味の範囲から出ることがない。リアル書店で偶然見かけた書籍が世界を広げてくれるというのと似ていると思います。MBAはむしろ人脈作りのほうが学業そのものよりも大きな目的だったりしますので、なおさらです。授業前後のちょっとした無駄話、ランチやカフェでのおしゃべり、パーティーなどの「不要不急」がいかに大事かということだと思います。座学だけならそれこそビデオで済むわけですから。

本人はそれでも「やりたい勉強をやれる時間」と前向きに捉えているようなので、救われました。学校によって状況は違うと思いますが、なかなか現状を変えるのは難しい中、それでも得るものはあると思いますので、この方に限らず現在留学している人は何とか頑張ってほしいと思います。

合格速報

受講生の長瀬さんがバークリー音楽大学に合格しました!

いや~なかなか入ろうと思って入れる大学ではないので、私としても非常に嬉しいです。もちろん当塾からは初の同大合格者です。

長瀬さんは事情でいったん音楽をあきらめたのですが、会社に勤めてから、やはりその道を追求したくなったとのことで、その意味でも今回の合格は本当に良かった。

私はかねてから「音楽の能力と言語能力には(完全とは言わないまでも緩やかな)相関性がある」と考えていますが、長瀬さんは日本国内で生まれ育ったにも関わらず、当初から英語の発音が上手で、教えるとさらに上手になりました。一方、英文読解にはやや難点があったため、そちらを中心に鍛えました。バークリーは意外に英語力の要求が高いとのことで、最終的にIELTSで高得点を取っての合格となりました。

長瀬さん、今回の合格、改めておめでとうございます!当面オンライン授業になるとのこと、音楽の授業をどうやってオンラインでやるのか私にはなかなか想像できませんが、様子をお聞きすることを楽しみにしています!

単語集の構成

河野太一執筆の『完全攻略!TOEFLⓇテスト英単語4000』には、タイトルの通り4,000個の単語が収録されています。

この4,000単語を、1,000個ずつのグループに分け、以下のように章立てしています。

1コア単語60レベル
2コア単語80レベル
3コア単語100レベル
4分野別頻出英単語

「コア単語」というのは、TOEFLやTOEICなどのテストを問わず、またトピックとなる学問分野などを問わずに登場する、英語の中核的な単語という意味です。

「60」「80」「100」などのレベル分けは、TOEEL iBTの満点である120点中、仮に60点を取るためには、その章に収録の単語は全て知っていなくてはならない、という意味です。

「分野別頻出英単語」は、地質学や天文学といった、TOEFLによく登場する学問分野に頻出する単語を集めています。

各章はさらに500単語ずつ(「分野別頻出英単語」のみ710と290)のパートに分かれています。この500単語のグループを順番に「潰してください」というのが、初回の授業で生徒さんに伝える「指令」です。「コア単語60レベル 1st」の500単語をまず潰し、次に「同 2nd」を潰し、そして「コア単語80レベル 1st」を潰し…という具合です。

なぜ私が「潰してください」と指導するのかについては、今後の投稿でお話します。